飲食店を開業するとき、内装工事で必ず確認しておきたいのが食品衛生法でもルール化されている、「厨房」と「客席」の区分けについてです。
厨房(キッチン)は、料理で使う食材を保管したり、実際に調理をしたり、食器を洗ったりする衛生管理上とても重要な場所ですよね。
そのため
客席や事務所、通路などと厨房の境目が曖昧なままでは、営業許可の検査時に指摘を受ける可能性が十分あります。
以前は、厨房と客席の間にはウエスタンドアやスイングドアのような仕切り扉を設けることが一般的でしたが、しかし法改正が行われた現在では、管轄の保健所に事前確認を行ったうえで、扉を付けずに厨房と客席を区分けできるケースもあります。
今回は、飲食店の厨房と客席を扉なしで区分けする方法について、内装工事の視点からお伝えします。
飲食店では厨房と客席を明確に分ける必要があります

飲食店の営業許可を取得するためには、厨房設備、手洗い設備、換気、給排水、床や壁の仕上げなど、さまざまな施設基準を満たす必要がありますが、その中でも大切ことの一つに、厨房と客席の区分けがあります。
厨房は食品を扱う作業場ですので、誰でも自由に出入りできるような状態では衛生管理上よくありません。
また
客席側と厨房側の境界が分かりにくいと、保健所の確認時に「どこまでが厨房なのか」「どこからが客席なのか」が判断しづらくなります。
そのため、飲食店の内装計画では、最初の段階で厨房区画を明確にしておくことが重要です。
以前はウエスタンドアを付けるのが一般的でした

法改正以前の飲食店工事では、厨房と客席の間にウエスタンドアを設置するケースが多くありました。
ウエスタンドアとは、腰くらいの高さで前後に開く扉のことです。
厨房の中をある程度隠せることや、客席側と厨房側を視覚的に分けられることから、飲食店ではよく使われていましたよね。
もちろん、今でもウエスタンドアを付けること自体は間違いではありません。ルール上指摘されないけど、厨房の中を見せたくないっていう理由からあえて設置を希望するオーナーさんもいます。
厨房内を見せたくない場合や、お客様が厨房側へ入りにくいようにしたい場合には、有効な方法です。
しかし、店舗の広さや動線によっては、扉がかえって邪魔になることもありますし、オペレーターが少ないお店で厨房から客席への出入りがとても多い飲食店ならいちいちパタパタするのがめんどくさいですよね。
特に小さな飲食店では、料理を運ぶたびに扉を押して出入りすることになり、スタッフの動きが悪くなることがあります。
現在は扉以外の方法で区分けできる場合があります
食品衛生法の改正に伴い、飲食店の施設基準も見直されています。
現在では、厨房と客席を区分けする方法として、必ずしも扉だけが唯一の選択肢ではありません。
管轄の保健所に確認したうえで、次のような方法で区分けが認められる場合があります。
床の色を変えて区分けする
一つ目は、厨房側と客席側で床の色を明確に変える方法です。
例えば、厨房側は清掃しやすく耐水性のある床材にし、客席側は店舗の雰囲気に合わせた床材にすることで、空間の役割を分かりやすくできます。
床の色がはっきり違っていれば、どこまでが厨房で、どこからが客席なのかが視覚的に分かります。
この方法は、見た目にも自然で、店舗デザインを損ないにくいのがメリットです。
段差を設けて区分けする
二つ目は、厨房と客席の間に段差を設ける方法です。
床の高さが変わることで、空間の境界がはっきりします。
ただし、段差は注意も必要です。
飲食店では、スタッフが料理や飲み物を持って移動します。
段差があることでつまずきや転倒のリスクが高くなる場合もあります。
見た目や許可のことだけでなく、実際に営業したときの安全性まで考えて計画することが大切です。
床に区分けラインを入れる
三つ目は、床に区分けラインや見切り材を入れる方法です。
今回の写真のように、厨房側、客席スペース、事務所などの境目にラインを入れることで、それぞれの区画を明確にできます。
この方法は、扉を設置しないため、スタッフの動線を邪魔しにくいのが特徴です。
料理を運ぶときも、片付けをするときも、扉の開閉がないためスムーズに移動できます。
小さな店舗や、厨房と客席の距離が近い店舗では、特に使いやすい方法です。
ただし、区分けラインが分かりにくいと意味がありません。
床の色とラインの色に差を付ける、見切り材を入れる、簡単に剥がれない材料を使うなど、長く使っても区分けが分かるようにしておく必要があります。
扉を付けないことで工事費用を抑えられる
厨房と客席の間にウエスタンドアを付ける場合、扉本体の費用だけでなく、取付のための下地工事や建具工事が必要になります。
場合によっては、柱や壁の位置を調整しなければならないこともあります。
一方で、床の色分けや区分けラインで対応できる場合は、扉を設置しない分、それよりも工事費用を抑えられるんです。
飲食店の開業時は、必要のない工事を減らせるのであれば、その分を本当に必要な設備や内装に回すことができます。
意外と知られてない
飲食店の内装工事では、施工会社の知識によって提案内容が変わります。
法改正のことを知らずに、昔の感覚のまま厨房と客席の間には必ず扉が必要ですと説明される内装会社があると聞きます。
もちろん、店舗の形状や営業内容によっては、扉を付けた方がよい場合もあります。
しかし、最初から扉ありきで考えてしまうと、本来は不要だった工事費用が発生する可能性があります。
オーナー様自身が「床の色分け」「段差」「区分けライン」などの方法を知っておくことで、内装工事の打ち合わせでも余計な費用を防ぎやすくなります。
最終判断は必ず管轄の保健所に確認しましょう
ここで注意していただきたいのは、厨房と客席の区分けについては、管轄の保健所によって判断が異なる場合があるということです。
同じような店舗でも、地域や営業内容、厨房の位置、客席との関係によって判断が変わる可能性がありますから、工事を始める前には、必ず図面を持って保健所へ事前相談することをおすすめします。
工事が終わってから「この区分けでは認められません」と言われると、追加工事や手直しが必要になります。
そうなると、余計な費用も時間もかかってしまいます。
飲食店の内装工事では、デザインや費用だけでなく、営業許可の基準まで考えて進めることが大切です。
厨房と客席の区分けは、許可と使いやすさの両方で考える
飲食店の厨房と客席は、明確に区分けする必要があります。
以前はウエスタンドアなどの扉で仕切ることが一般的でしたが、現在では、床の色分け、段差、区分けラインなどで対応できる場合もあります。
扉を付けないことで、スタッフの動線が良くなり、工事費用を抑えられることもあります。
ただし、どの方法でも認められるわけではありません。
最終的には、管轄の保健所の判断が必要です。
飲食店の開業や改装を検討している方は、厨房と客席の区分けについて、工事前の段階でしっかり確認しておきましょう。
まとめ
飲食店では、厨房側と客席側を明確に区分けする必要があります。
以前はウエスタンドアなどの仕切り扉を設置することが一般的でしたが、現在は扉を付けずに、床の色分けや段差、区分けラインで対応できる場合もあります。
余計な工事費用をかけないためには、オーナー様自身も厨房区分けの方法を知っておくことが大切です。
ただし、最終的な判断は管轄の保健所によって異なります。
飲食店の内装工事を行う前には、必ず図面をもとに保健所へ事前相談しておきましょう。
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